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2008年9月

2008年9月24日 (水)

いちじく

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いちじくを食べるたびに描いてみたいなあと思い、店先に並ぶのを今か今かと待っていた。

いちじくをふたつに割ったなかみの、

薄赤紫とふちの乳白色のにじんたようなところが良い。

それから外皮の黄緑と赤紫がまざりつつぼやけているところ。

果実の存在がそのまま水彩的だわと思う。

と、思い入れいっぱいで描き始めたものの、イメージのとおりに描くことができずにうちひしがれる。

頭の中でこういうふうに描こうとシミュレーションする絵の具のにじみが、紙の上で表現できない。

*

5才くらいのとき、水森亜土さんの描くキャラクターが大好きだった。

どこかへでかけた帰り道に、

頭の中でずっとそのキャラクターを描きながら、

「家に着いたら画用紙に描こう!」

とはりきって玄関のドアを開け、紙に向かったのだが、

いざ描き始めたら似ても似つかぬキャラクターができあがった。

「さっきは描けたのに(→頭の中でね)どうして描けないの?」

とショックを受けつつ不思議に思ったものだ。

たぶんそのときまでは、イメージを持って描くってことをしていなくて、

クレヨンから湧き出るものをそのまま描いていたのだろう。

頭の中で描くのと紙に描くことの違いを知った5才のゆすら…

(今でも時々思い出すくらいだから、そうとう衝撃だったんだろうな~)

*

などと思いながら、いちじくに何度目かの彩色。

前回の描きかたではうまくいかなかったから次は別の描きかたでやってみよう、と試行錯誤するうちに、少しずつイメージに近づいていく(さらに遠のくこともありますが、笑)のは嬉しいし、そこが絵の楽しいところかなと思う。

しかし、のんきに試行錯誤していたら「食べごろですよ~」といわんばかりの良い香りがいちじくから漂ってきた。

「ああ、そうだ。食べてみればなにかひらめくかも!」

(いや、食べたかっただけ!)

かぶりとかじると、実の赤いところと皮の内側の白いところがやわらかく口の中で混ざる。

これこれ。この淡く溶ける感じ。

描くのにも、食べるのにも、ここに魅了される。

この魅力を描きたいと願いながら、いちじくの皿を空にした。

*

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いちじくを描くのに使った絵の具。

名前の後に赤丸がついてるのが固形、それ以外はチューブ。

今まではホルベインのチューブを使っていて、固形を使ったのは今回はじめて。

先日、知り合いの家でウィンザー&ニュートンの固形水彩絵の具を使わせてもらうという幸運に巡り合い、

48色の絵の具がずらっと並んでいる木の箱を、

「どうぞ使ってみて!」

と差し出されたら、

なんだかもう有頂天になってしまい、ずうずうしくも全色試し塗りさせてもらってしまった。

固形で並んでいる絵の具は眺めているだけでわくわくするものなのだけど、

(画材屋に行っては眺めて買わずに帰ってくるって何度やったことか…あれを買うのは清水舞台よ)

紙にのせた絵の具は別の気持ちを呼び起こす。

しっとりと紙に吸い込まれつつ、鮮やかに浮き上がる色彩。

一色一色を紙にのせていく過程は、朝日が昇る前の空の色を眺めている気持ちに似ていて、

ホルベインのチューブ絵の具も好きだけど、もっといろいろな絵の具を使ってみたい!

との思いがむくむく。

そして買ったのが、

・ウィンザー&ニュートンのネープルスイエロー

・レンブラントのアリザリンクリムソン

・シュミンケのウルトラマリンブルー

の3色(上記の色見本の赤丸の色)。

ウィンザー&ニュートンのネープルスイエローは、淡く薄くのびて粒子が細かい感触。さわるとすべすべしていそうな色ののりかた。

レンブラントのアリザリンクリムソンは、艶を保ちながらのびていく感じ。パレットの上でのばしていてもコクがある感触。

シュミンケのウルトラマリンブルーは、紙に吸い込まれるようでありながら、とてもなめらかにのびる。のびがよくて、かつ微妙な濃淡がでる。

チューブと固形の違い、色による違い、メーカの違い…いろいろなんだろうなあ。

何種類かの絵の具を試しながら、気に入ったものを(そのうち48色!)そろえていきたいなあと思っている。

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2008年9月 7日 (日)

音楽と灯り

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ジュスカ・グランペールのライブへ。

代官山iスタジオの庭園にて。

庭園にはこの日のステージのために、燈火器という灯りがいくつも並べられディスプレイされている。

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ゆらゆらゆれる炎と、淡く浮かぶような灯りのたたずまいは幻想的で、精霊がこの日の演奏を聴きに来ているようにも見える。

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少し涼しくなってきたものの、夏の夜の屋外ライブのためか、

蚊取り線香がところどころに置かれていて、

蚊にさされないようにとの心配りが嬉しい。

そして線香からたなびく煙がまた風流であったりする。

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ジュスカ・グランペールの奏でるギターとヴァイオリンの音色は、心の奥にじんわりと沁みてくる。

ろうそくの炎のゆらめきをながめているときの、どこかくつろいだ気持ちに似ている。

そしてライブが終わるころには、森の中でゆっくりと深呼吸をしたようなしあわせな気持ちになるのだ。

*

会場を埋め尽くしていた燈火器という灯りは、武田高明さんという陶芸家が作られたもの。

この日の会場の空間演出も武田さんの手によるものとのこと。

11月には、奈良国立博物館で開催される正倉院展で、「音燈華(おんとうげ)」という記念イベントがあり、そこでもこの燈火器の演出とジュスカ・グランペールの演奏が繰り広げられるそう。

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